糖尿病
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若年で血液透析導入となったミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病の1例
園木 一男西山 公恵佐藤 雄一鶴田 宏小野山 薫中村 晋吉成 元孝藤島 正敏
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1998 年 41 巻 6 号 p. 467-474

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抄録

症例は26歳の男性. 平成3年インスリン非依存性糖尿病と診断された. 平成4年腎機能はBUN12.2mg/dl, Cr0.7mg/dl, Ccr63.2ml/minであった.母親に糖尿病および難聴があり, 患者にも難聴を認め, 若年発症の糖尿病であったためミトコンドリア遺伝子異常を検索したところ, 3243変異が証明された. 平成6年ネフローゼ症候群 (BUN16.4mg/dl, Cr0.8mg/dl, Ccr39.6ml/min) を発症した際, 腎生検を施行. 光顕上メサンギウム領域の拡大など糖尿病性腎症に一致する所見の他に, 蛍光染色上IgMや補体の顆粒状沈着, 電顕上のelectron dense depositも認められ, 網膜症合併前に蛋白尿が出現するなど糖尿病以外に巣状糸球体硬化症 (FGS) の合併も示唆された既報1) の症例である. その後も本症例は外来受診が不定期で, 血糖コントロールは不良であった. 平成8年3月呼吸困難, 咳嗽, 浮腫にて6回目の入院となった. BUN49.1mg/dl, Cr5.3mg/dl, Ccr2.8~11.1ml/minと急激な腎機能の低下が認められた. 腎生検の再検では, 末期腎不全像を呈しており, 同年7月より血液透析となった. 本症例は糖尿病と診断されて5年で急激に腎機能が低下しており, その原因として, 血糖コントロール不良 (インスリンを使用してHbA1c 8.3~16.7%) や蛋白制限食の不徹底だけでなく, 腎組織におけるミトコンドリア遺伝子異常が腎機能悪化に関与したと考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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