1999 年 42 巻 1 号 p. 43-47
症例は73歳女性.糖尿病の家族歴なし. 68歳, 初めて糖尿病を指摘され治療中であったが, 血糖コントロール不良のため入院. 腹部超音波, 腹部CT, ERCPにて膵体尾部欠損症と診断した. 血糖コントロールは眠前中間型インスリン4単位の投与によりほぼ良好となった.グルカゴン負荷試験の血中Cペプチドは, 前値0.3ng/ml, 6分値2.9ng/mlであり, 尿中Cペプチドは13.0μg/dayであった. steady-state of plasma glucose法によるインスリン感受性試験は, 85mg/dlと良好であった. 以上より, 本症例は膵体尾部欠損症に基づく膵性糖尿病と推察され, 慢性膵炎による糖尿病やインスリン依存型糖尿病 (IDDM) と異なり, 基礎分泌に比し追加分泌が比較的保たれるという特徴が認められた.