1999 年 42 巻 12 号 p. 1021-1026
症例は37歳の女性. 1997年10月10日, 口渇出現. 10月14日, 妊娠27週の妊婦健診にて尿糖を初めて指摘され, 翌10月15日近医受診し血糖727mg/dlを指摘され, 当院紹介となった. 当院受診時, 血糖769mg/dl, 尿ケトン体 (3+), 動脈血pH7.271, BE-13.9mEq/l, HCO39.6mmol/lにて糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) と診断した. 生理食塩水の大量投与と速効型インスリンの持続投与にて, 10月15日中にはケトアシドーシスが消失した. 入院中の尿中Cペプチドは2回測定し10.3μ9/day, 14.4μg/dayと低値であり, 分娩後3日目に行ったグルカゴン負荷試験にても血清Cペプチドは前値0.4ng/ml, 6分値0.6ng/mlと低値であり, インスリン依存型糖尿病が疑われた. なお, 1998年1月18日, 妊娠40週にて女児を正常分娩した. 本例は, 妊娠中にDKAを発症し, 胎児仮死徴候を認めたが, 正常分娩に至り, 出生児にも異常を認めなかった貴重な症例と思われる.