糖尿病
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慢性偽性腸閉塞と著しい脂肪肝を来したMELAS糖尿病の1例
亀谷 富夫藤田 一越田 英夫北谷 真子
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1999 年 42 巻 2 号 p. 169-173

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抄録

症例は, 57歳の女性. 母と弟に糖尿病を認めた. 難聴を認め, 30歳より糖尿病を指摘されインスリン療法を開始した. 44歳, 右半身不全麻痺が出現し, 52歳より下痢, 頻脈発作を認めた. ミトコンドリア遺伝子の3, 243変異によるMELASと診断される. 1997年4月2日, 左半身の脱力のため入院となる. 入院後, 偽性腸閉塞を認め各種薬剤を投与したが, チトクロームCで軽度改善を認めた以外は無効であった. 脂肪製剤を含む力ロリー輸液にて, 高度の胆汁うっ滞を伴った著明な脂肪肝を認めた. 脂肪製剤の投与中止と輸液力ロリーの減量により肝障害は改善した. ミトコンドリア遺伝子異常を伴う糖尿病では, 消化管の筋障害や神経障害が原因で偽性腸閉塞を起こしやすいと思われ, 特に注意が必要と思われる. またその際の輸液においても脂肪製剤の投与にて高度の脂肪肝が発症する恐れもあり, 投与力ロリー量やその内容について十分な検討が必要と考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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