症例は71歳女性, 1999年5月13日嘔吐出現し, 2日後意識障害を主訴に入院. 入院時, 血糖値1651mg/dl, 尿ケトン体 (±), 動脈血ガス分析にてpH7.08, HCO3-6.2mmol/L, 血清CPK26770U/L, 血清クレアチニン4.9mg/dlより著明な代謝性アシドーシス, 横紋筋融解症と急性腎不全を合併した糖尿病性昏睡と診断した. ただちに輸液とインスリン持続注入法を開始し, 18時間後には血糖値124mg/dlと低下し, その後CPKと血清クレアチニンも徐々に低下した. しかし, 入院10時間後より下痢と下血が出現し, 大腸内視鏡検査にて直腸からS状結腸にかけての縦走潰瘍を認め虚血性腸炎と診断した. 著明な狭窄を残したが, 保存療法にて改善した. 虚血性腸炎の原因として高齢による動脈硬化に加え高血糖による循環不全が考えられた. 糖尿病性昏睡の治療にあたり虚血性腸炎も念頭に置いた対応が必要と考えられた.