われわれは糖尿病性ケトアシドーシス時にInterleukin-6 (IL-6) 等のサイトカインが血中に増加することを報告してきた. 近年, 肝細胞の増殖因子として, Hepatocyte Growth Factor (以下HGF) の構造解析がなされ, さらにHGFは種々の機能を有するサイトカインであるとも解明された. そこで, 糖尿病性ケトアシドーシス時には血中にHGFが増力口している可能性を考え, ケトアシドーシス (12例) の血清中のHGFを検討した. 対照として, ケトーシスを伴わない, 単なる高血糖の患者 (8例) の血清中のHGFも測定した. ケトアシドーシス群のHGFは1.28±0.99ng/mlで, 高血糖群のHGFは0.35±0.15ng/mlで有意 (p<0.05) にケトアシドーシス群で高値であった. ケトアシドーシス時のHGF高値の病因は不明であるが, ケトアシドーシス時にHGFが高値を示すという報告はなく, 興味深い現象と思われる.