2002 年 45 巻 4 号 p. 253-256
症例は47歳, 女性. 両親ともに2型糖尿病. 41歳時, 体重98kgと肥満を認めたが耐糖能は正常であった. 45歳時にバセドウ病および糖尿病と診断され, チアマゾールと食事療法でコントロール良好 (HbA1c10.596から6.896へ改善) であった. その後, 食事療法が守れずケトーシスを来し, 一旦はα-グルコシダーゼ阻害薬のみで血糖コントロール可能となったが, 約1年6カ月で内因性インスリン分泌が廃絶しインスリン導入となった. 本例は, 初診時より抗GAD抗体が5.136U/mlと著明高値であり, 緩徐進行型の1型糖尿病と考えられた. バセドウ病と糖尿病が合併した場合, 本症例のように, 肥満歴および糖尿病の家族歴から2型糖尿病と思われても, その中には緩徐進行型の1型糖尿病の進展形式をとる例が存在する可能性も考慮して抗GAD抗体の測定を実施しておくことが重要であり, 慎重な経過観察が必要であることが示唆された.