2002 年 45 巻 4 号 p. 257-262
症例は70歳男性. 1996年5月, 健診で多発性肝腫瘍を指摘された. 肝臓の試験切除の結果, neuroendocrine carcinomaの肝転移と診断され, fluorouracil, doxorubicin, cycbphosphamideによる化学療法を受けていた. 1998年8月, 空腹時に意識障害が出現し入院. 低血糖と相対的な高インスリン血症, 肝転移巣の病理検査で転移性悪性インスリノーマと診断された. 原発巣は不明であった. 多発性肝転移を伴うため手術適応はなく, 各種の薬物療法を行ったが, 血糖値が20mg/dlに及ぶ程の著しい低血糖が頻繁に出現した. そこでStreptozotocinの静脈内投与を行ったところ, 血糖コントロールが改善し, 腫瘍の縮小もみた. 治療開始一年半後の現在も, 経過は良好である.