2002 年 45 巻 8 号 p. 593-598
症例は38歳の女性. 4児の母であり, 第1子妊娠中に尿糖陽性を指摘され, 各妊娠時に耐糖能異常を指摘されたが非妊娠時の耐糖能は正常であった. 2000年8月13日頃から口渇, 全身倦怠感が出現し, 8月16日当院救急受診. 血糖値311mg/dl, 尿ケトン体強陽性, pH7.242, HCO3- 7.4mmol/lより糖尿病性ケトアシドーシス (diabetic ketoacidosis: DKA) の診断で当科入院となった. 抗GAD抗体22.600 U/mlと強陽性, インスリン自己抗体陽性で, 1型糖尿病と診断され, 経過から緩徐進行型インスリン依存糖尿病 (sbwly progressive IDDM: SPIDDM) が疑われた.HLA-DR抗原は2, 9, 53を認めた. また, びまん性甲状腺腫, Free T3高値, TSH低値, 抗TSH受容体抗体・抗TPO抗体および抗サイログロブリン抗体陽性, 甲状腺99mTcシンチグラフィで摂取率の増力口を認め, バセドウ病と診断された. 1型糖尿病にバセドウ病を合併した場合, 多腺性自己免疫 (polygrandular autoimmune: PGA) 症候群のType lllに属するとされる. 本症例は両疾患の同時発症の比較的典型例と思われる. 今後さらに症例が蓄積され, 病因が解明されることが期待される.