2002 年 45 巻 8 号 p. 605-611
症例は40歳女性. 11歳時よりインスリン依存型糖尿病を発症し, インスリン持続皮下注入療法を導入されていた. 2001年3月上旬からの上気道炎症状に伴い, 反復性嘔吐, 尿ケトン体強陽性を認め, 同年3月14日当科入院となる. 輸液とインスリン療法にて尿・血中ケトン体は改善するも, 反復性嘔吐は継続. グルコースクランプ法にて, 食事に伴い遷延したインスリン注入が認められ, 糖尿病性胃不全麻痺の存在が示唆された. 1, 520kcal全粥食とドンペリドン坐剤にて症状は改善し, 摂食良好となった. さらに, 経口散剤に変更するも症状の増悪はなし. グルコースクランプ法にて摂食に伴った鋭敏なインスリン注入が確認され, 胃排泄能の改善が示唆された. 以上, 著しい嘔吐を伴う糖尿病性胃不全麻痺に対し, 投与方法を工夫することによりドンペリドンが著効し, 胃排泄能の経過を追った評価方法としてグルコースクランプ法が有用であった症例を経験した.