2003 年 46 巻 10 号 p. 819-824
症例は41歳, 男性. 1995年, 糖尿病と診断されるも放置. 1997年, 当科で2型糖尿病 としてSU剤を開始, 1999年より通院不定期となり, 以後HbA1c11%台であった, 2002年4月初めより発熱を呈し, 左膝関節痛を自覚. 同年4月10日, 糖尿病性昏睡にて当院救命センターに入院となった, 入院時ショック状態を呈し, 左膝関節は明らかに腫脹していた. 入院時検査所見で随時血糖が1, 980mg/dl, 血漿浸透圧432mOsm/lと高値を示し, 動脈血ガス分析では混合性アシドーシスを呈した. 入院後直ちに気管内挿管により人工呼吸管理とし, 高血糖および脱水は, 大量輸液とインスリンの静脈内持続点滴にて改善され, 救命することができた. 化膿性膝関節炎に対しては, 抗生剤の投与, 切開排膿, 滑膜切除術および1日5,000mlの持続灌流を続け, 膝関節痛は改善し, 炎症反応も陰性化した. 経過中, 下血ともに直腸に急性の孤立性潰瘍および狭窄を認めたが, 内視鏡的拡張術を繰り返し施行し, 狭窄は改善した. 本症例は, コントロール不良の2型糖尿病患者に化膿性膝関節炎, 敗血症を合併し, それを契機に高浸透圧性糖尿病性昏目垂ショックとなり, さらに急性直腸粘膜病変を合併した極めて稀な症例と考えられた.