糖尿病
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頸部エコーで偶然発見したヨード誘発性甲状腺機能低下症の1例
糖尿病の食事療法におけるヨード過剰摂取の注意
山本 朱美阿部 恭子片山 泰之富山 浩二繁 英樹細合 浩司平田 文彦安田 浩子
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2003 年 46 巻 5 号 p. 381-385

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抄録

糖尿病食事療法の指導で海藻類の摂取を推奨され, 2年間昆布やひじきなど海藻類を多食してヨード誘発性甲状腺機能低下症にいたったが, 典型的な臨床所見が出現することなく頸部エコーで診断し得た症例を経験したため報告する. 症例は67歳男性で, 甲状腺機能低下症に典型的な臨床症状や所見を認めなかったが, 頸部エコー (動脈硬化のスクリーニング目的) で観察した際, 甲状腺の内部エコーの不均一, ドプラーによる甲状腺全体の血流増加所見を認めた. TSH>100μIU/ml, fT40.30ngdlと甲状腺機能低下であったが, 甲状腺受容体抗体, サイロイドテスト, マイクロゾームテスト, TPO抗体は陰性であった. 問診により2年前の糖尿病教育入院以降, 毎日昆布を中心に海藻類を多食し, 1日平均100mg以上のヨードを摂取していたことがわかり, ヨード誘発性甲状腺機能低下症と診断した. 特に1日70~80g摂取していた昆布煮を中止させ, 1日3mg以下のヨード制限指導を行ったところ甲状腺機能は改善を示した. 糖尿病食事療法では, ヨードを多量に含む海藻類は低カロリーであるため摂取がむしろ推奨されることが多く, ヨード過剰摂取となる可能性もある. ヨード誘発性甲状腺機能低下症は比較的高齢者において多く認められるため, 特に高齢の糖尿病患者では食事指導に注意が必要である. また, 動脈硬化症スクリーニング時に頸動脈エコーとともに, 甲状腺観察は容易に実施できるため, 潜在性の甲状腺疾患の診断のためにも積極的に行うべきと考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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