2004 年 47 巻 6 号 p. 481-487
糖尿病のサブタイプとして, ミトコンドリアDNA (mtDNA) 3243A-G変異による糖尿病が明らかにされた. 我が国における3243A-G変異糖尿病の臨床像の解明を目的に, 遺伝子異常による糖尿病調歪研究委員会はアンケート法で実態調査を実施した. 3243A-G変異糖尿病患者115例の解析から, 臨床像として, 低身長, やせの体型, 糖尿病診断時年齢は比較的若年であり, 糖尿病の母系遺伝を59.1%に認めた. 診断後平均3年でインスリン治療へ移行するが, GAD抗体は全例陰性であった. 感音性難聴 (92.2%), 心筋症 (30.4%), 心刺激伝導障害 (27.8%), MELAS (14.8%), pigment retinal dystrophy (13.4%) など, ミトコンドリア関連合併症を高頻度に認めた. 末梢神経障害を49.6%に認め, 有痛性末梢神経障害は18.3%と比較的高かった. 26.1%に多彩な自律神経障害を認めた. 網膜症を56.596に, 腎症を49.696に認めた. 罹病期間 (平均12.9年) の割に慢性合併症に進行例が多かった. 本研究により, 日本人3243A-G変異糖尿病患者の特徴的な臨床像が明らかになった.