糖尿病
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ミトコンドリア脳筋症を合併したミトコンドリア遺伝子変異糖尿病の4家系7症例
花岡 郁子田中 督司武呂 誠司渡部 仁美隠岐 尚吾
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2004 年 47 巻 9 号 p. 737-742

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抄録

ミトコンドリア遺伝子変異糖尿病は, maternally inherited diabetes mellitus and deafness (MIDD) とも呼ばれ, 特徴的な臨床像を示す. 我々は, ミトコンドリア脳筋症 (MELAS) を合併したMIDDの4家系7症例を経験し, その臨床像を検討したので報告する. 症例は男性3例, 女性4例. 年齢は20-59歳, 糖尿病の平均罹病期間は15年, 平均BMIは16.5kg/m2. 初診時の平均HbA1cは9.796. 全例とも肥満の既往を認めず, 糖尿病は1例を除き40歳までの発症であった. 空腹時血中CPRは0.2-2.7ng/mlで, 罹病期間が10年以上の症例は1.0ng/ml未満でインスリン分泌能が低下していた, 単純性網膜症を3例に, 神経障害を4例に, 早期腎症を3例に, 巣状糸球体硬化症を1例に認めた. 1例は食事療法, 6例はインスリンで血糖コントロールした. 全例に血中乳酸/ピルビン酸値比の上昇, 心筋症や心伝導障害を認めた, 6例に感音性難聴を認め, 3家系は母系遺伝であった. 6例に脳画像所見の異常を, 5例に知能低下, 筋力低下を認めた. 5例で骨格筋生検標本に3243 (A-G) 点変異を認め, 残りの2例は臨床症状と家族歴からMIDDと診断した. MIDDは全身に多彩な病像を有し, 糖尿病の罹病期間と共に進行性の病態が認められた. 今後, インスリン分泌能やその他の臨床症状を含め注意深く経過観察する必要がある.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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