凍結および乾燥研究会記録
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5. 細菌細胞内に氷晶ができることの条件 : 特に細胞膜の透過性について
根井 外喜男荒木 忠松坂 理夫
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1967 年 13 巻 p. 24-31

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抄録

凍結過程における細胞内氷晶形成の機構を知るために、大腸菌の好気及び嫌気培養菌を用いて、凍結の際の細胞水分の移動に注目して、細胞内に氷晶ができることの条件を検討した。その結果、嫌気培養菌は好気培養菌より凍結による障害を受け易いとともに凍結以外の方法での急速な細胞水分の移動によつて死滅しやすいことが認められた。また、予め細胞水分を脱水しておくと、脱水の度合が大きいほど脱水しない場合に比べて生残率の低下が抑制されるとともに細胞内氷晶形成が防がれる。しかも、この抑制のためには、好気培養菌より嫌気培養菌の方がより高度に脱水して、残つている細胞水分量を少なくしなければならない。以上の実験事実から、嫌気培養菌の細胞膜の方が水に対する透過性が小さいことが認められ、細胞内氷晶形成は細胞水分の脱水速度と細胞膜の水に対する透過性との兼ね合で決ることが確認された。

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© 1967 低温生物工学会
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