2016 年 4 巻 2 号 p. 121-133
本研究は、ポピュラーカルチャーの観光対象化を文化構築主義の観点から分析するものである。本稿が事例として取りあげる鳥取県境港市と長野県上田市は、マンガと歴史という対照的な二つの文化要素を対象とする観光地である。しかしながら、本研究の考察は表面的な様相とは違い、実際これらの地域で観光される文化はポピュラーカルチャーと伝統文化という規範的な範疇に収まるものではないことをみせてくれる。伝統文化とポピュラーカルチャーが「観光されるために」相互浸透的に脱文脈化するという事実は、現代観光が既存の二分法では説明できない新たな文化的価値を構築していることを示している。