抄録
Resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA)は低侵襲に大動脈遮断が可能で, 体幹部出血制御の非常に強力なツールである. 今回, 高次救命救急センターから1000km離れた島嶼で発症した破裂腎動脈瘤で出血性ショックに陥った患者が, 現地の救急車内でREBOA留置後, 長時間航空搬送に耐えて特に合併症なく独歩退院できた症例を提示する. 症例は49歳男性で特記すべき既往はない. 患者は突然の右肋骨縁の痛みを主訴に小笠原村診療所を独歩で受診後ショックバイタルに陥り, 本土への航空搬送が要請された. 救急医が現地の救急車内でREBOAを胸部大動脈に留置した後, 患者は5時間の航空搬送に耐えて都立広尾病院に搬入され, 直ちにInterventional radiology (IVR)による腎動脈のparental artery occlusion (PAO)が行われた. その後開腹術を行うことなく2日目には経口摂取が開始され, 発症20日で自宅に独歩退院となった. さらなる検証が必要ではあるが, 離島をはじめとした僻地でREBOAを常備しておくことは, 出血性ショックの患者搬送に有用と考えられる.