抄録
製薬協基礎研究会では、2002年にトキシコゲノミクス(TG)およびファルマコゲノミクス(PG)の取り組みについて加盟企業へのアンケート調査を実施した。その結果、未導入の会社が多く、具体的成果があまり得られていない状況が確認された。その後、日本および欧米ではPGのガイダンスが公表間近となり、本格的な対応が必要となりつつある。また、前回の調査から2年が経過し、ゲノミクスを取り入れた具体的成果や課題がより明確になってきていると考え、再度、TG・PGへの取り組みを調査し、その結果について、2002年のものと対比し、その課題の抽出に資する事を目的とした。
アンケートは製薬協加盟80社を対象に実施(2005年1月6日-2月10日)し、TG、PGのそれぞれの有効回答数は共に63であった。
TG:現在TGは約40%(24社)の企業で導入されていた。TG技術は、創薬段階での薬物篩い分け、前臨床試験での毒性予測、ヒト副作用の予測、毒性メカニズム解析、バイオマーカーによる毒性評価、バイオマーカー確立、他剤との差別化に活用され、中でもほとんどの企業で毒性メカニズム解析は実施されていた。本調査ではTG技術の用途別に成功例、失敗例または課題について各社の意見をまとめた。さらに、前回の調査では問題点として「TG結果の意義付け」が圧倒的に多く、今回も約7割の意見は同様な結果であったが、残りの3割の意見は何らか形で結果の意義付けが見えてきたとの回答であった。
PG:薬物動態評価に何らかの形でPGを取り入れている企業は約45%(30社)であった(なお、酵素誘導評価においてレポーターアッセイ、RT-PCRを取り入れている企業も含めた)。薬物代謝酵素、トランスポーターの多型性の評価結果は臨床試験デザインに大きく影響することから、多型で層別した臨床試験を実施するために基礎が準備する試験データについて各社の意見をまとめた。