日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY2-2
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酸化ストレスと毒作用発現
酸化ストレスと癌
*豊國 伸哉
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抄録

「フリーラジカル・活性酸素による負荷から、抗酸化分子・抗酸化酵素・修復酵素などを介した消去・防御・修復能を差し引いたもの」が酸化ストレスの概念である。ここでは、発がんおよびがん領域における酸化ストレス研究の現状ならびにどのようなアプローチが可能かに関して新旧併せて紹介する。私たちは、鉄キレート剤投与によりFenton反応を尿細管にひき起こす腎傷害・発がんモデルを詳細に検討してきた。通常のパラフィン包埋標本上で酸化ストレスの可視化が可能となったのは90年代になってからであった。フリーラジカル反応で特異的に発生しかつ標本内に固定される epitopeに対する抗体を作製がなされた。脂質過酸化最終産物の一つである4-hydroxy-2-nonenalがMichael付加反応で蛋白と反応したhemiacetal構造、DNA修飾塩基である8-hydroxy-2’-deoxyguanosineやacrolein-deoxyadenosineが代表的 epitope である。これらの方法は既に定法として酸化ストレス病態の解析に広く使用されている。フリーラジカルはその反応性の高さより近傍にある分子と反応するため、反応選択性は低いと考えられてきた。私たちは、上記腎がんモデルにおいてF1動物を使用して遺伝学的解析を行い、主な標的遺伝子のひとつがp16INK4A がん抑制遺伝子であることを見いだした。しかもその変化は初期に発生する。発がんにおいては選択という要素があるが、フリーラジカルの反応は生体内において、特異的な表現型となりうることが判明してきた。最後に、がん発生の起点であるゲノム情報の変化に関して私たちがoxygenomicsと呼ぶ新しいアプローチを紹介する。
参考文献:1. Toyokuni S. Pathol Int 49: 91, 1999. 2. Tanaka T et al. Oncogene 18, 3793, 1999. 3. Hiroyasu et al. 160: 419, 2002. 4. Dutta KK et al. Lab Invest 85: 768, 2005.

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© 2006 日本毒性学会
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