日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY4-4
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環境汚染物質の毒性評価-分子レベルから個体レベルまで-
ナノ粒子・ナノマテリアルの健康影響
*高野 裕久
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抄録

医学、工学、薬学等の多分野でナノテクノロジーは応用され、ナノメーターサイズのナノチューブやナノ粒子等の新素材が大量生産されている。これらのナノマテリアルは、表面積の加増、触媒・酵素活性の上昇、溶解・吸収・透過性の向上、抗菌作用等を目的に創出され、化粧品、歯磨き、塗料、携帯電話等の一般生活関連製品や、半導体、デイスプレイ、データ蓄積機器等の一般家電製品にも広く使用されているため、人体への曝露機会が急増している。ナノマテリアルは、呼吸器、消化器、皮膚・粘膜を介し人体に曝露される可能性がある。ナノマテリアルは、吸収性や透過性の向上を目的として作製されている場合も多く、曝露臓器・系統からの容易な吸収による体内侵入と、その後の全身循環系や免疫系等への影響惹起の可能性を否定できない。また、ナノマテリアルは種々の活性が高い場合が多いこと、既報告上、物質が微小であればあるほど生体毒性を発揮する活性酸素・フリーラジカルの生成が多いことなどから、体内に侵入したナノマテリアルの生体影響は、粗大なマテリアルより強い可能性も危惧される。一方、ナノメーターサイズの物質の生体影響に関しては、自動車排ガス等の燃焼由来の大気中浮遊微小粒子状物質に関わる研究が先行してきた。その結果、微小粒子の生体影響には、それを受けやすい「高感受性群」が存在することが報告されている。それらの「高感受性群」には呼吸器疾患、免疫・アレルギー疾患、循環器疾患等が列挙される。大気中の微小粒子の報告例からも、上述のナノマテリアルの曝露様式や特性からも、呼吸器、循環器、免疫・アレルギー系とそれらに関連する疾患は、ナノマテリアルの健康影響に対する「高感受性群」である可能性が強く想定される。本シンポジウムでは、免疫・アレルギー、呼吸器系とそれらに関連する疾患モデルに、ナノマテリアルの曝露が及ぼす健康影響に関するわれわれの知見を紹介する。

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© 2006 日本毒性学会
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