日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-021
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試験法:in vivo
ホルマリン固定-パラフィン包埋肝組織標本におけるmRNA発現の評価に関する検討
*崎村 雅憲浅岡 由次浜田 悦昌堀井 郁夫
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抄録
(目的)我々は第32回学術年会において,ホルマリン固定-パラフィン包埋(FFPE)標本からRNAを効率よく抽出する方法,ならびにRT-PCRに最適な逆転写の条件について報告した。今回,その方法を用いてFFPE肝組織標本中のmRNA発現量を評価し,凍結標本から検出されたmRNA発現量と比較検討したので報告する。
(実験材料と方法)7.5週齢のCrl:CD(SD)ラット(各群雌雄各6匹)にフェノバルビタール(PB)80 mg/kgまたはクロフィブレート(CL)150 mg/kgを4日間投与し,陰性対照として無処置群を設定した。投与期間終了後,肝臓を採取して一部を10%中性緩衝ホルマリン液に浸漬し,7日後にパラフィン包埋した。そのブロックを薄切(10μm×2枚)し,Optimum FFPE RNA Isolation Kit(Ambion)を用いてRNAを抽出した(標準プロトコル中のproteinase K処理を60℃16時間に変更)。得られたRNAは,random hexamersを用いて37℃で逆転写した。それとは別に,同じ肝臓の一部を-80℃で凍結保存し,TRIzol(Invitrogen)を用いてRNAを抽出した。得られたRNAは,Oligo(dT)プライマーを用いて50℃で逆転写した。その後,リアルタイムPCR(ABI PRISM 7000)により数種類の酵素についてmRNA発現量を調べた。
(結果)無処置対照群との比較で,PB投与群ではCYP2B2やCYP3A1,CL投与群ではacyl-CoA oxidaseなど,数種類のmRNAの発現量が増加した。FFPE標本におけるmRNA発現のパターンは凍結標本のそれと同等であり,差はほとんどないと考えられた。また,ホルマリン固定期間を2週間に延長したFFPE標本や,パラフィンブロックのまま1年以上経過したFFPE標本についても同様に検討したが,何れも凍結標本と同等の結果が得られた。
(結論)以上より,長期保存中のFFPE標本においても肝酵素誘導の測定は十分可能であり,その検出感度は凍結標本における検出感度に匹敵することが明らかとなった。
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© 2006 日本毒性学会
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