日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY5-1
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創薬・育薬を目指したトキシコロジー教育の新たな構築
トキシコロジー教育の確立を目指して―薬学における現状と展望
*吉田 武美
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抄録

トキシコロジーは、医薬品はじめヒトの生活環境中に存在する化学物質の毒性・安全性を的確に評価し、安心・安全で適正使用のための情報を提供するとともに、自然環境・生態系の健全性の保全へも寄与できる最も基盤となる学問分野である。さらに、毒性発現機構を解明することにより、より有効で安全性の高い化学物質の創製につなげる学問分野である。そのため、トキシコロジーは、極めて総合的な学問分野であり、実質的に最近の進歩の著しい分子生物学までもが構成要因となる。このように学際的なトキシコロジーであるが、わが国におけるその教育面においては、改善すべき多くの問題を抱えている。薬学部は、平成18年度から6年制が開始しているが、その基本は薬剤師教育が主体となる。現在薬学部においては、トキシコロジー教育については、必ずしも一致した見解が得られていない。薬学部においては、病理学、生理学、組織学、薬理学など人体を中心とした講義が行われ、加えてトキシコロジーに関連するほとんどの分野が講義されている。また、毒・劇物、麻薬・向精神薬、覚せい剤、大麻などに関する取締法の教育も行われている。直接毒性と関連するのは、化学物質の生体への影響、薬毒物と中毒、医薬品の安全性などで全般的な教育が実施されている。また生活と環境では、食中毒と関連して天然毒物に関する知識も提供している。しかし、現在トキシコロジー関連のこれらの分野が、薬剤師国家試験問題数としては極限られているため各大学の取り組みは低いと考えられる。今後6年制が進行するに伴い、医薬品の安全性学として、その開発から副作用・有害作用を含めた市販前・市販後安全性教育の充実が図られることを期待する。

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© 2007 日本毒性学会
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