日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S4-4
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毒性オミクス
バイオマーカー探索に向けたトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトにおけるアプローチ
*中津 則之山田 弘
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抄録

 医薬品開発における安全性評価の効率化に資することを目的とし、トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP1)は医薬品中心の150化合物についてラット肝・腎、ラット一次培養肝細胞、ヒト凍結肝細胞の遺伝子発現および古典的毒性データを取得し、データベースを構築した。トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)の目的は(1)医薬品の安全性予測に資する安全性バイオマーカーの開発、(2)種差の壁を越えるヒトの副作用予測性の向上、(3)医薬品審査での安全性評価におけるゲノミクスデータの応用である。
 安全性バイオマーカーの開発においては、参加企業の必要性に応じた目的を設定し適切な解析手法を適用することにより進めている。また、必要に応じて機序既知化合物、検証用化合物等の遺伝子発現データの追加取得を進めている。
 ヒトの副作用予測性の向上においては、TGP1でのヒト凍結肝細胞と、ラット一次培養肝細胞を用いたブリッジングを進めるとともに、臨床で採取可能なサンプルにおける遺伝子発現データを用いたブリッジングに挑戦している。実際には末梢血が唯一の利用可能なものであり、ラットの末梢血の遺伝子発現パターンから臓器毒性が診断・予測できれば、臨床への応用が期待できる。
 医薬品審査での安全性評価におけるゲノミクスデータの応用においては、少なくとも参加企業内ではデータの互換性・再現性が担保されていなければならず、将来的にレギュラトリーサイエンスに応用することを考えた場合、異なる施設、プラットホーム、プロトコールなどのデータへの影響を検討することは必須である。TGP2ではまず施設間バリデーションを行い、参加企業において取得したデータを比較したところ、非常に良好な互換性が得られた。
 本シンポジウムでは、これらの目的へのTGP2のアプローチについてデータとともに概説する。

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© 2009 日本毒性学会
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