日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S8-4
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ナノマテリアルの毒性学
ナノサイズ二酸化チタニウム投与による肺発がん促進作用とその機序の解析
*津田 洋幸徐 結苟二口 充飯郷 正明深町 勝巳Alexander B. David内野 正西村 哲治徳永 裕司広瀬 明彦菅野 純
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抄録

【目的】ナノ粒子には吸入曝露の可能性があるため、肺がん等のリスク評価が重要である。無コーティングルチル型粒径20nm二酸化チタニウム(TiO2)の肺発がんプロモーション作用およびその機序を追究した。 【方法と結果】乳腺発がん高感受性雌ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子トランスジェニックラット(Tg)に0.2% DHPNを2週間飲水投与して発がんイニシエーション処置をした。TiO2は1回あたり生食中250ppmまたは500ppm濃度で、第4週から第16週まで2週間に1回0.5mlづつ計7回気管内噴霧して17週で終了した。TiO2凝集塊は肺胞マクロファージに貪食されていたが肺胞壁組織にはなかった。脳、頚部リンパ節、乳腺、肝には検出された(ICP/MS)。対照群では肺胞過形成(個数/ラット)は5.9、肺腺腫は0であったが、TiO2 500ppm群では肺胞過形成は11.1、肺腺腫は0.46であり、乳腺がんは対照群3.0に対して500ppm群で6.6であり、いずれも有意なプロモーション作用を示した。その作用機序解析の目的で、野生型雌SDラットにTiO2を8日間に5回気管内噴霧する実験を行った。SOD活性および8-OHdGレベルの有意な増加がみられた。サイトカインアレイ解析では、TiO2群でMIPαが有意に増加した。Thioglycolate刺激によって肺より採取した肺胞マクロファージの培養液にTiO2を加えたところ、培養上清にはMIPαが含まれ、ヒト肺がん細胞を増殖させた。またMIPαはTiO2投与ラットの血清に含まれ、Tgの乳がん細胞に対して増殖を惹起させた。 【まとめ】ナノサイズTiO2を投与すると肺と乳腺発がん促進作用がみられ、その機序には、酸化ストレスに加えてTiO2を貪食したマクロファージが産生するMIPαが関与することが示された。

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© 2009 日本毒性学会
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