日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: W2-1
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毒性質問箱2009 第一部 トキシコロジストの研鑽
社会人研究者の学位取得
*赤堀 文昭
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キーワード: 社会人研究者, 学位取得
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抄録

日本の学位(博士)取得制度は、大学院博士課程で学位を取得する場合(課程博士)と課程学生ではないが(社会人研究者など)、博士課程修了者と同等以上の学力があると確認され、博士論文の審査に合格した者に学位を授与(論文博士)する二つの方法がある。このうち論文博士制度については、文部科学省中央教育審議会が将来的には廃止すべきではないかと答申している。 学位論文作成に当たっては、論文課題とした研究の「目的」を明確にすることが重要である。そして、その目的を達成するためには段階的に研究を進め(学術雑誌への2編から3編の発表業績がこれにあたる)、体系的・論理的な実証に基づいて結論が導き出されたものでなければならない。また、学位(博士)を申請する論文はその申請する研究分野において「どのような新規性(研究結果としての)」があり、その分野の研究発展に「どのような大きな貢献」をし、さらには、研究成果はその研究分野に限らず、例えば医療領域や社会に対し、「どのような貢献ができるものであるかを」強調する論文であってほしい。多くの場合、学位申請論文は論文を提出する前に学術雑誌に発表した論文をまとめることになるが、発表した一つ一つの研究論文は優れた素晴らしい論文として公表されているものの、前述のような形で、体系的に学位論文としてまとめることが社会人研究者にはどうも難しいようである。その理由の一つとして、それらの論文は最初から学位論文にまとめようとして構成されたものではないことがあげられる。学位を申請する論文にはサイエンスとしての新規性があり、また、論文の結論が学位を申請する分野・領域に、さらには、社会に対し如何に貢献するものであるかも強調されていなければならない。学位論文の作成は研究者にとって、生涯教育の一里塚であり、生涯自ら学ぶことの楽しさとありがたさを、後になって噛みしめることのできる貴重な機会でもある。

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© 2009 日本毒性学会
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