日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-42
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一般演題 口演
金ナノ粒子の曝露により誘導される血液毒性と長期的な安全性評価の必要性
*山口 真奈美吉岡 靖雄平井 敏郎髙橋 秀樹角田 慎一東阪 和馬堤 康央
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抄録

金ナノ粒子は、ナノサイズに微小化されたことで単位重量当たりの比表面積が増大し、多数の化合物を結合させることが可能となる。さらに、表面増強ラマン散乱により高感度に検出できるため、疾患の診断薬やDDSキャリアの開発など、金ナノ粒子の医薬品への応用が進められている。医薬品としての応用に向けて、金ナノ粒子の安全性確保が必須であり、体内動態・ハザード発現に関して、粒子径や表面修飾などの物性と関連付けた情報の収集が重要である。しかし、金ナノ粒子の急性的な毒性評価は進んでいるものの、長期的な検討は、ほとんど行われていない。そこで本検討では、様々な粒子径の金ナノ粒子を用い、その血中残留性や血液毒性の有無に関して長期的に評価した。粒子径10、30、50、70、90 nmの金ナノ粒子を、BALB/cマウスに単回尾静脈内投与した。投与から56日後まで経日的に採血し、ICP-MSを用いて血中金量を測定した。その結果、投与から24時間後、また56日後において、いずれの粒子径の金ナノ粒子も血中からほとんど検出されなかった。しかし、24時間後と56日後の血液で血球検査をしたところ、24時間後の血液では群間に差は認められなかったが、56日後の血液では粒子径の増大に伴い白血球数が減少する傾向が観察された。本結果から、金ナノ粒子は投与から24時間後には、血液からはほとんど消失するものの、体外には排泄されず、生体影響を引き起こした可能性が考えられた。さらに、粒子径依存的に白血球が減少したことから、粒子径によって臓器への蓄積性が異なる可能性も考えられた。現在、金粒子投与後の長期的な臓器分布の解析を進めている。本検討は、金ナノ粒子の安全性評価を長期的に行う必要性を示したものであり、安全かつ有効なナノ医薬の開発に資する情報となることを期待している。

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© 2014 日本毒性学会
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