日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-65
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優秀研究発表 ポスター
3次元培養ヒト皮膚モデルを用いた難水溶性物質の皮膚感作性評価
*竹之内 修齋藤 和智西條 拓額田 祐子宮澤 正明坂口 斉
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抄録

<背景・目的>これまで我々は、動物を用いた皮膚感作性試験法を代替するべく、樹状細胞の活性化に着目したin vitro皮膚感作性試験法human Cell Line Activation Test (h-CLAT)の開発、および予測精度の更なる向上を目指し、Direct Peptide Reactivity Assay (DPRA)との組み合わせによる評価体系の構築を行ってきた。しかしながら、試験溶媒に不溶のため試験に適用できない、もしくは培地や緩衝液中で油滴や析出を生じ偽陰性となる等、両試験法では正しく評価できない難水溶性物質(LogKow>3.5)の存在が明らかとなった。そこで我々は、動物試験と同様の曝露が可能である3次元培養ヒト皮膚モデルに着目し、感作性物質によるストレス関連遺伝子の発現量を指標とした試験法;Epidermal Sensitization Assay (EpiSensA)を開発してきた。本検討では、既存の代替法では適切に評価できない難水溶性物質の感作性をEpiSensAで評価可能か検討した。
<方法>h-CLATおよびDPRAで適切に評価できない難水溶性物質を、3次元培養ヒト皮膚モデルLabcyteに曝露し、6時間後にRNAを回収し、cDNAを合成後Real-Time PCRによってストレス関連遺伝子(e.g. Activation Transcription Factor 3; ATF3、Heat Shock Protein A1A; HSPA1A)の発現量を測定した。また、被験物質を曝露した際の細胞生存率をLDH assayによって測定した。
<結果>難水溶性の感作性物質であるclotrimazoleでは、無毒性となる濃度から、溶媒対照に対して30%程度の細胞毒性が認められる濃度において、ATF3やHSPA1Aなど、複数の遺伝子で4倍を超える発現上昇が認められた。また、dibutyl anilineにおいても4倍を超えるATF3の発現上昇が認められた。さらに、hexylcinnamic aldehydeでは、無毒性となる濃度において4倍以上のATF3の発現上昇が誘導された。一方、非感作性物質であるdibutyl phthalateでは、ストレス関連遺伝子の発現上昇は認められなかった。以上より、EpiSensAが既存代替法では評価が困難な難水溶性物質の評価に有用である可能性が見出された。今後、被験物質数を増やし、多様な化学物質の感作性評価への有用性を検証する予定である。

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© 2014 日本毒性学会
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