日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-2
会議情報

シンポジウム 1 急性中毒の予後に影響するバイオマーカーの臨床および基礎毒性学的な考察
アセトアミノフェン中毒における予後判定のためのバイオマーカーの探索
*福本 真理子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 アセトアミノフェン(APAP)は、安全性の高い解熱鎮痛薬として、医療用および一般用として広く汎用されているが、大量摂取により重篤な肝毒性を呈する。急性中毒において、初期には特徴的な症状がなく遅発性に肝障害が発現すること、N-アセチルシステインという特異的解毒薬があること、解毒薬投与を早く開始すれば肝毒性を未然に防ぐことが出来る事から、早期に予後を判定できるバイオマーカーが求められている。
 現在、大量摂取後4時間以降の血中濃度を指標としたRumack-Matthewのノモグラムが、急性中毒患者の予後判定に用いられている。しかし、肝毒性の本体がAPAPではなく、CYP2E1を介した毒性代謝物NAPQIであることから、APAP濃度を基準としたノモグラムでは、10~20%の患者で治療ライン以下で治療は不要と判定しても肝毒性を呈する例がある。また、摂取時間が推定できない場合や、繰り返し摂取患者での慢性毒性の判定はできない。
 そこでNAPQIが肝細胞の蛋白と結合し、肝細胞の壊死を起こした結果、細胞膜の透過性の変容により、血中に逸脱してきたAPAP-蛋白付加物を指標として捉えるという研究が、米国において進んでいる。本邦においては、著者らがマウス及び日本人中毒患者での蛋白付加物の定量を検討している。
 さらに、入院初期に確実に予後を判定する指標として、欧米で注目されているのは、microRNA-122、HMGB1、keratin-18、GLDHである。特に肝細胞壊死の指標となるmicroRNA-122やHMGB1については、APAP摂取直後のALTが正常範囲の入院時に、血漿中で上昇することが認められており、英国においては臨床研究も実施されている。今後、本邦においても、より確実で迅速な予後判定の指標として、これらについても積極的な検討を行い、臨床応用可能な新規判定法を確立してゆかねばならない。

著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top