日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-7
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シンポジウム 13 化学物質曝露と子どもの脳発達 ・・・発達神経毒性ガイドラインの現状と課題
化学物質への周産期曝露と発達神経毒性の新たな評価法
*遠山 千春
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抄録
 化学物質の安全性・リスク評価の毒性試験法において、発達神経毒性は重要な構成要素となっている。OECD/EPAのガイドラインにおいても、その必要性が謳われ手法が具体化されているが、試験の煩雑さや時間がかかることなどから、発達神経毒性試験が行われた数は、極めて少ない。その結果、国内外のリスク評価機関において、様々な化学物質のTDI/ADIが定められているが発達神経毒性がその根拠の指標となっている事例はほとんど無い。食品安全委員会の農薬約240種類に関する個別の評価文書においても、「発達神経毒性」項目がある農薬は数種類であり、その項目中に高次脳機能に関する記載は乏しい。
 様々な化学物質に対する健康リスクは、「見逃さず」に対応することが重要である。特に発達神経毒性は、実験条件や実験者による変動を受けやすいことから、簡便で再現性と精度の高い試験法の開発と応用が求められている。発達神経毒性の評価に際しては、母体や胎仔に顕著な影響が観察されない用量において、生後の動物における高次脳機能変化を、機能的変化と器質的変化の観点から捉えることが望ましい。
 この講演では著者らが開発してきた齧歯類の高次脳機能を検出するための新たな試験法(ラットにおける連合学習、マウスにおける遂行機能、脅迫的繰り返し行動、社会的優位性など、マウスにおける「行動抑制」(=不適切な/衝動的な行動を抑える能力)、ならびに、これまで十分に検討されていなかった脳組織の微細構造変化(樹状突起の分枝数やスパイン密度等)や分子マーカーが、化学物質への周産期曝露と発達神経毒性を調べる上で有用であることについて紹介する。
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© 2014 日本毒性学会
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