日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-5
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シンポジウム 4 ヒト iPS 細胞由来分化細胞を用いた医薬品安全性評価の課題と現状
安全性薬理試験法開発におけるボトルネックは何か
*関野 祐子
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抄録

 ヒトiPS細胞の創薬応用には、探索スクリーニングから医薬品候補化合物の安全性試験などの幅広い応用可能性がうたわれている。ヒト由来幹細胞から分化した臓器細胞は、受容体との結合を調べる分子レベルの試験と動物を用いた機能試験の中間に位置づけられると考えられており、これらをヒト細胞由来の臓器組織モデルとして考えれば、ヒトでの有害反応の予測に利用できる可能性への期待が大きい。そこで我々は、ヒトiPS細胞由来分化細胞を医薬品の安全性評価に応用するための薬理試験法の開発を開始した。分化細胞を使った学術研究論文は増えているが、報告毎に、分化誘導条件、分化誘導日数、培養細胞密度など、細胞標本の状態が異なるばかりではなく、細胞機能の測定方法も異なっているのが現状であり、データの再現性を保証する実験方法は確立されていない。そのために、実験データを論文報告間で比較検討ができないばかりでなく、分化細胞の良し悪しを評価することも出来ていない。そこで我々は、複数の研究施設間で同じ標本を用いて、データを確認しつつ、分化細胞のための標準的な薬理試験法プロトコルの開発に着手した。今後、多施設間バリデーションを行い、薬理試験法としての有用性を科学的に検証する予定である。現時点で急いで解消するべきボトルネックは、薬理試験に標準的に用いることができる心筋細胞の開発である。ちょうど1年前にICH‐E14の廃止、S7Bの改訂に関する提案を行いたい旨がFDAより発表された。QT延長予測に偏った現安全性薬理試験法を見直して、より催不整脈性予測を重視する方向に試験法を改訂していくことで、現試験法での偽陽性によるドロップアウトを極力減らすことで、新薬開発を促進するのが狙いである。それを実現するための非臨床試験法の提案として、ヒトiPS細胞由来心筋の安全性薬理試験への応用可能性のための確固たる科学的根拠の提示が求められている。

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© 2014 日本毒性学会
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