日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-3
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シンポジウム 6 毒性オミクス -遺伝子発現ネットワークを標的とした、治療、毒性、及びそれらの評価の新動向-
Percellome Projectの進捗―新型反復暴露による慢性毒性の予測に向けての分子背景の解析―
*菅野 純相﨑 健一北嶋 聡
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抄録

 Percellome Projectは定量的遺伝子発現測定を基に、化学物質投与により変動する遺伝子発現ネットワーク(Gene Expression Network;GEN)の網羅的描出と、そこからの動的バイオマーカー(Dynamic Biomarker)の抽出、カタログ化により、毒性評価予測体系の構築を進めている。現在、マウス肝、肺、脳等の延べ300余の各種暴露実験のデータベースを更新中で、独自の3次元グラフ表示を活用した各種ソフトウエアの開発により解析を効率的に進めている。
 ここでは、遺伝子欠失(KO)マウスにヒントを得た「新型反復暴露実験」を報告する。TCDD投与により野生型(WT)マウスではCyp1a1等の発現が上昇するが、AhRKOではGENが異なることから、これらの反応は消失する。これを毒性学に拡大すると、十分な反復暴露を受けたマウスのGENは「化学的に誘導された遺伝子改変状態」にあると見做される。この状態を作り出す新型反復暴露を実施した結果、2種類の反応、即ち、過渡反応:暴露の都度誘導され概ね24時間以内に収まる速い変化、及び、基線反応:暴露を重ねるに連れ発現値の基線が徐々に移動する緩徐な反応、が変化する事が判明した。四塩化炭素の反復投与の場合、多数の遺伝子において過渡反応が消失し、それらの基線反応は低下傾向を示した。少数には逆に過渡反応の増加が見られ、その基線反応は上昇していた。
 以上の所見は、反復暴露が転写機構に対してエピジェネティックな制御を及ぼす分子機構の存在を示唆した。インフォマティクス解析により小胞体ストレス系(Xbp1、eIF2)がこれに関わる可能性が指摘され、現在その上流の解析を進めている。本所見は反復暴露の本質に係り、その機構解明は短期暴露試験からの慢性毒性の論理的網羅的予測を可能にすると期待される。(本研究は厚生労働科学研究費補助金等による)

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© 2014 日本毒性学会
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