日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W6-4
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ワークショップ 6 複合型毒性試験の実施に関する現場でのQ&A
医薬候補品の安全性評価における病態モデル動物の使用
*南谷 賢一郎
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抄録
 医薬候補品の非臨床安全試試験においては、通常、正常動物を用いて安全性の評価が行われている。Olsonらの研究(Reg Tox Pharm, 32, 56-67, 2000)では、ヒトの臨床試験で認められた副作用の71%は正常動物を用いた一般毒性試験において検出可能であることが示され、正常動物を用いた毒性試験は有用と解釈されている。しかし、逆に言えば、29%の副作用は正常動物では検出不能と考えることもでき、また、臓器別に分類してみると予測性の低い臓器が存在することも事実である。このような背景の下、臨床での副作用の予測性向上を目的として様々な取り組みが行われており、病態モデル動物を用いた安全性評価もアイデアの一つとして挙げられる。正常動物で認められたある種の毒性が、病態モデル動物において顕在化するか、逆に消失(減弱)するかを検証することは、ヒトでの副作用のリスク評価に重要と考えられる。また、正常動物で認められた毒性の機序解明にも病態モデル動物は有用であろう。しかしながら、承認申請資料を調べる限り、病態モデル動物を用いて医薬候補品の安全性を評価している事例は非常に少なく、実施例の多くは臨床で認められた副作用の機序解明を目的としているのが実情である。前臨床段階において病態モデル動物を用いて患者さんの副作用リスクを評価しているケースは非常に限定的と考えられる。
 本発表では医薬候補品の安全性評価における病態モデル動物の使用の現状、使用する際の課題を概説し、今後の取り組みについて議論したい。さらに、薬物性肝障害に焦点を当て、肝障害の検出力を高めた病態モデル動物に関する論文等の知見を紹介し、それらの使用法についても議論したい。
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© 2014 日本毒性学会
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