日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-15
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一般演題 口演
女性における毛髪中の金属濃度と生活習慣病の調査研究
*川﨑 直人緒方 文彦
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抄録
【目的】毛髪の構成成分の大部分は,酵素などにより分解されにくく,システイン含量が高いタンパク質であるケラチンである。一方,ミネラルは骨組織や電解質や酵素の成分として重要であり,体内に取り込まれた後,毛髪へも排泄される。したがって,毛髪中のミネラルを定期的に測定することにより,疾病に罹患する前に細胞レベルでの変動をみる検査に適用できる可能性がある。本研究では,毛髪中のミネラル濃度から疾病予防に関する有益な知見を得るため,疾病や生活習慣などに関するアンケート調査を行い,それらの結果と毛髪中の有害ミネラルおよび必須ミネラル濃度との関連性について検討した。
【方法】本研究は近畿大学薬学部倫理委員会の承認に基づき,同意が得られた20~50歳代の女性605名から後頭部より毛髪を採取した。また,特定健康診査に準拠した項目について,アンケートを行った。毛髪中のミネラル濃度は ICP-MSを用いて定量し,その結果とアンケートとの関連性はロジスティック回帰分析により,また,加齢とアンケートとの関連性はχ2検定により行い,有意水準は p<0.05とした。なお,統計解析にはJMP ver.12(SAS Institute)を用いた。
【結果・考察】アンケート結果より,加齢に伴い有意に増大した項目としては,血圧,コレステロール,骨密度に関するものがあった。また,加齢に伴い体重の増加が認められたが,食習慣が悪い女性や一年以内に体重増減のあった女性は有意に減少した。この結果から,食習慣や運動習慣は,年代が低いほど悪いことがわかった。毛髪中のミネラル濃度とアンケートとの関連性において,特に,20代では習慣的な喫煙により,鉄以外の必須ミネラル濃度は増大し,有害ミネラル濃度は増減が認められた。また,40や50代では,体格や運動習慣,食習慣などの多くの項目と毛髪中のミネラル濃度との関連性が認められた。さらに,各年代において,疾病と毛髪中のミネラル濃度との間に特徴的な関連性を認めた。
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© 2016 日本毒性学会
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