日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-21
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優秀研究発表 ポスター
γH2AXを指標としたin vivo 遺伝毒性評価系の構築-ラット肝臓における検討-
*曽根 瑞季豊田 武士Young-Man CHO赤木 純一水田 保子西川 秋佳小川 久美子
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抄録
【目的】我々は、28日間反復投与毒性試験のサンプルを活用したin vivo遺伝毒性評価法の構築を試みている。現在までに、DNA二重鎖切断の鋭敏なマーカーとして知られるリン酸化ヒストンH2AX(γH2AX)を指標とし、ラットおよびマウス28日間反復投与毒性試験系で遺伝毒性膀胱発がん物質を検出できる可能性を報告した(Toyoda et al., Toxicol. Sci. 2015)。本研究では標的臓器を肝臓とし、膀胱以外の臓器におけるγH2AXの遺伝毒性検出指標としての有用性について検討した。
【方法】各群10匹の6週齢・雄F344ラットに、遺伝毒性肝発がん物質Diethylnitrosamine(DEN)および3,3-Dimethylbenzidine dihydrochloride(3,3'-DMB 2HCl)、遺伝毒性非肝発がん物質4-Chloro-o-phenylenediamineおよびN-Ethyl-N-nitrosourea、非遺伝毒性肝発がん物質Bis(2-ethylhexyl)phthalateおよび1,4-Dioxaneの計6物質を4週間混餌または飲水投与し、肝臓におけるγH2AXの発現を免疫組織化学的に解析した。
【結果・考察】4週間投与後の肝細胞におけるγH2AX陽性細胞率は、対照群と比較し、遺伝毒性肝発がん物質DEN投与群および非遺伝毒性肝発がん物質1,4-Dioxane投与群において有意な増加が認められた。一方で、遺伝毒性物質3,3'-DMB 2HClを含む他物質投与群では、有意な発現増加は認められなかった。γH2AX陽性細胞の増加が認められた2物質におけるγH2AXの発現部位を比較すると、DEN投与群では核内に微細点状に陽性像を示す細胞が80%を占めているのに対し、1,4-Dioxane投与群ではこれらの細胞は39%にとどまり、その一方で核膜上に環状のγH2AX発現を示す細胞が61%を占めていた。現在DNA修復および細胞周期関連因子についてのmRNA/タンパク質発現解析を実施しており、それぞれの投与群におけるγH2AX発現細胞の質的違いについて、これらの結果と併せて議論したい。
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© 2016 日本毒性学会
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