日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-5
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シンポジウム10 ナノマテリアルの実用化に呼応した有害性評価の進捗
多層カーボンナノチューブ(MWNT-7)のラット全身吸入ばく露による肺発がん
*笠井 辰也梅田 ゆみ大西 誠福島 昭治
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抄録
ストレートタイプの多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、化学的に安定でアスベストと類似した形状をもつことからアスベストと同様に肺線維症、肺がん、中皮腫、胸膜肥厚等を引き起こす可能性が危惧されている。人はMWCNTを取り扱う様々な状況で経気道的にばく露する可能性がある。そこで、実際の人のばく露経路を考慮して、雌雄ラットを用いてMWCNTの全身ばく露による発がん性試験を行った。
被験物質はストレートタイプのMWCNT(保土谷化学工業社製のMWNT-7)を使用した。投与は、0、0.02、0.2及び2 mg/m3の濃度のMWCNTエアロゾルを1日6時間、週5日間、104週間(2年間)、F344/DuCrlCrljラットの雌雄に全身ばく露することで行った。ばく露の結果、雄は0.2 mg/m3以上の群、雌では2 mg/m3群で肺の腫瘍、特にがんの発生増加が認められた。また、がんに関連する過形成もがんの発生した群でみられた。胸膜では、過形成と線維化の発生増加が観察されたものの、中皮腫は観察されなかった。病理観察(光顕)では、肺胞内のMWCNTの沈着は低濃度からばく露濃度に相関して認められ、そのほとんどが肺胞マクロファージに貪食されていた。さらに、MWCNTの化学分析とSEM観察により、肺内のMWCNTは、光顕観察結果と同様、低濃度からばく露濃度に相関して増加し、繊維長は約6 µm であった。肺内のMWCNTは、マクロファージに貪食され、まゆ状の凝集塊を形成した。一方、胸腔内でも、ばく露濃度に相関してMWCNTは増加した。形状は、単離した直線状のものがほとんどで、長さは、肺に認められたものと同等であったが、量は肺に比べて顕著に少なかった。MWCNTの発がんには、ROS種やサイトカイン等の関与も示唆されるが、本研究からは、MWCNTの肺発がんには、十分な長さと量が必要であることが示された。(本研究は厚生労働省委託研究、ナノマテリアルの吸入ばく露事業の一環として実施した)
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© 2016 日本毒性学会
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