抄録
近年、医薬品市場全体の中におけるバイオ医薬品のシェアも年々高まっており、この傾向は今後も継続するものと想定される。中でも、もともと血液中に存在し、免疫力の中核を担う、生体内物質である抗体医薬品の市場の拡大が見込まれている。低分子化合物である化学合成医薬品がタンク内の化学反応によって製造されるのに対し、バイオ医薬品は生き物である細胞の生体機能を利用することにより製造される。このように細胞を利用して製造する場合は、培養条件等の違いにより、製造されるバイオ医薬品の構造上の不均一性を生み出すこととなる。
化学合成医薬品では製造工程中、あるいは保存中に構造の変化を伴う分解を生じた場合には分解物として規制していく必要が生じる。一方、バイオ医薬品では分子変化体であっても、目的物質と同様の生物活性があり、製品の安全性及び有効性に悪影響を及ぼさない場合は、目的物質関連物質として不純物とは考えず、規制の対象とはしない。そこで構造上の変化を確認することと同様に、特に有効性への影響を確認するため、いわゆる生物活性の評価を行うことが必要不可欠である。
抗体の構造変化としては、凝集、切断、酸化、脱アミド化などが考えられる。これらの変化は、抗体の不均一性を引き起こし、不均一化によって生じる分解物・変化物が医薬品の有効性・安全性に影響を与える可能性があることから、これらの分解物・変化物の評価はバイオ医薬品の開発及び品質管理において極めて重要である。分析手法としては主に各種分離モードを用いたクロマトグラフィーによる測定、あるいは測定前に還元あるいは酵素処理などの手法により断片化した試料を測定することにより、変化部位に関する情報を得る。今回の発表ではこれらの分析手法について詳細に紹介する。