日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-267
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一般演題 ポスター
チオ-ジメチルアルシン酸による紡錘体チェックポイント誘導に対するグルタチオンの影響
*北 加代子櫛原 理子関口 匠重留 夏海鈴木 俊英
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抄録

【目的】これまで当研究室では、ヒ素のメチル化代謝物チオ-ジメチルアルシン酸(thio-DMA)が、紡錘体チェックポイントを作動させて細胞を分裂期(M期)に蓄積させることを報告している。また、M期の蓄積と共に誘導されるアポトーシスによって異常細胞の蓄積が抑制されることから、紡錘体チェックポイントがthio-DMAに対する重要な防御機構である可能性を明らかにしている。グルタチオン(GSH)はヒ素の毒性軽減にも関わる生体内の主要な防御因子であるが、GSH共存下ではthio-DMAによって誘発される紡錘体チェックポイントが抑制される現象を新たに見出した。そこで本研究では、GSHによる紡錘体チェックポイントの抑制がthio-DMAの毒性発現にどのように関与するのか検討した。【方法】HeLa細胞とV79細胞を用い、GSHとthio-DMAの処理タイミングを変えた時の紡錘体チェックポイント作動の有無を調べた。また、thio-DMAによる染色体異常の出現を指標にGSHの影響を調べた。【結果・考察】GSHをthio-DMAより前、同時、後に添加した場合について検討したところ、いずれのタイミングでGSHを加えてもthio-DMAによる紡錘体チェックポイントの誘導が抑制された。またthio-DMAによって誘発される染色体の数的異常はGSHの前処理と同時処理で抑制され、GSHが防御的に働く可能性が示唆された。一方、thio-DMA処理後にGSHを添加した場合、染色体の数的異常は抑制されず、さらに間期で多核を示す細胞の割合が増加する傾向がみられた。このことから、thio-DMAの処理後にGSHを添加した場合には、本来チェックポイントによって除かれるべき異常細胞の生存を可能にし、多核細胞の出現を促進してしまう可能性も考えられた。GSHと紡錘体チェックポイントの関係について、現在詳細な検討を行っている。

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© 2017 日本毒性学会
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