日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-273
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一般演題 ポスター
カドミウムによるHSP90の化学修飾を介した転写因子HSF1の活性化と活性イオウ分子によるその制御
*鵜木 隆光新開 泰弘増田 章秋山 雅博Ming XIAN熊谷 嘉人
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抄録

【目的】カドミウム (Cd) 毒性の一因は、タンパク質のシステイン残基への化学修飾による機能障害と考えられる。一方、生体は反応性の高い化学物質に対し、センサータンパク質の化学修飾を介して親電子シグナルを活性化し、生体防御系の遺伝子発現を亢進させる応答システムを有することが分かってきた。我々はcystathionine γ-lyase (CSE) やcystathionine β-synthase (CBS) が生体内においてシスチンを基質としてパースルフィドやポリスルフィドなど高い求核性を有する活性イオウ分子 (Reactive Sulfur Species, RSS) を産生し (Ida T et al. PNAS 2014)、これらが親電子物質であるメチル水銀の不活性化に関わることを明らかにした (Abiko Y et al. Chem Res Toxicol 2015)。すなわち、Cdによる親電子シグナルの活性化および毒性発現は、RSSにより負に制御されると予想された。本研究では、親電子シグナルとしてheat shock protein/heat shock factor 1 (HSP/HSF1) 経路に着目し、Cdによる当該経路の活性化機序とRSSによるその制御を解析した。
【結果および考察】Cdに曝露したウシ大動脈血管内皮細胞 (BAEC) では、センサータンパク質HSP90のCdによる化学修飾に伴い転写因子HSF1が活性化し、その下流のHSP70を発現誘導した。HSF1をノックダウンするとCd毒性が増強したため、HSP90/HSF1経路がCdの毒性防御機構であることが示唆された。次に、当該シグナル伝達経路に対するRSSの役割を検討した。BAECにてCSEとCBSをダブルノックダウンし細胞内RSS量を減少させると、Cd曝露によるHSP70の誘導が増強されたため、HSP90/HSF1経路の活性化はRSSによって負に制御されると示唆された。更に、CSE/CBSダブルノックダウンはCd毒性を増強した。以上より、RSSはイオウ付加体の形成を介してCdを不活性化し、親電子シグナルの活性化およびCdの毒性発現を制御することが示唆された (Shinkai Y et al. Toxicol Sci 2017)。

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© 2017 日本毒性学会
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