日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-3
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シンポジウム10 抗酸化レドックスと活性イオウによる解毒代謝機構の新展開
活性イオウ分子による新しい親電子解毒システムの解明
*安孫子 ユミ熊谷 嘉人
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抄録

親電子物質は、生体内の求核基であるタンパク質のチオール基と容易に共有結合を形成することで毒性を発揮することが知られている。一方、親電子物質は、システインを含有するトリペプチドであるグルタチオン (GSH) により抱合体化されて親電子性が失われるとされてきた。ところが、環境中親電子物質である1,2-ナフトキノン (1,2-NQ)、tert-ブチルベンゾキノン (TBQ) およびメチル水銀 (MeHg) とGSHとの結合は可逆的であり、当該GSH抱合体の親電子物質が他のタンパク質を修飾した。このことは、GSH抱合以外に環境中親電子物質を解毒するシステムの存在を示唆している。これを支持するように、MeHgの新規解毒代謝物であるビスMeHgサルファイド [(MeHg)2S] を同定し、本ビス体がGSHパーサルファイド (GSSH) やポリサルファイド (GSSSG) との反応で生じることを明らかとした。GSSHやGSSSGはシスタチオニンγ—リアーゼ等の働きで産生されたシステインパーサルファイド (CysSSH) の可動性イオウ原子がGSSG等に転移して生じる。我々は、これらのパー/ポリサルファイドはモノサルファイドより求核性が高いため、容易に環境中親電子物質を捕捉する新しい解毒因子として機能すると想定している。これまでに、パー/ポリサルファイドと環境中親電子物質との反応で、(1,2-NQ)2S、(1,4-NQ)2S、(TBQ)2S、(アクリルアミド)2S、(アセトアミノフェン)2S、およびCdS等のイオウ付加体が生じること明らかにしており、(1,4-NQ)2SおよびCdSについては毒性が低いことを確認している。現在、生体内パーサルファイドおよびポリサルファイド量が環境中親電子物質によるリスクに関与しているか否か検討を進めている。

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© 2017 日本毒性学会
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