日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-3
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シンポジウム8 メタルトキシコロジーを牽引する最先端分析法の現状と展望
単一細胞ICP-MS:金属毒性研究に資する単一細胞解析アプローチの新手法
*宮下 振一
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抄録

近年、金属毒性学分野において、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)による単一細胞分析が注目を集めている。ICP-MSを用いた従来の元素分析はバルク分析であり、細胞の元素分析であれば106個といった多数の細胞を溶液化した後、分析に供する必要があった。しかしながら、ここ数年では、細胞を溶液化することなく直接プラズマに導入し、単一細胞からのイオン生成過程を測定する手法が考案されたことにより、細胞1個の元素分析が可能となっている。この手法は単一細胞ICP-MSと呼ばれ、金属毒性研究に資する単一細胞解析アプローチの新手法として、有害金属や金属含有製剤の細胞曝露試験における金属挙動解析に応用されつつある。単一細胞ICP-MSは、原理的に細胞のみならず広く粒子状物質に適用可能であることから、近年では、金属または金属酸化物ナノ粒子を対象とした元素分析(単一粒子ICP-MS)としての活用も広まりつつある。ナノ粒子の特性評価においては、化学組成情報に加えて、粒子径や個数濃度等、多角的な物性情報の取得が重要となるが、単一粒子ICP-MSは粒子径や個数濃度、さらには溶解・凝集状態に関する情報の取得も可能である。この手法はこれまでにナノ粒子含有製品における粒子の特性評価や環境中での粒子の挙動解析に応用されており、ナノ毒性学分野においても、ナノ粒子の細胞曝露試験における新たな粒子挙動解析手法として期待されている。本講演では、単一細胞ICP-MSの話題に焦点を絞り、その国内外の動向を紹介するとともに、これまでに演者らが行ってきたより精確かつハイスループットな細胞分析の実現を目指した分析システムの開発成果、ならびに開発システムを酵母等の微生物の金属分析や微細藻類による金属回収評価に応用した結果について紹介する。

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© 2017 日本毒性学会
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