日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-4
会議情報

シンポジウム1
肝毒性知識の体系化とその応用のためのオントロジー工学的アプローチ
*山縣 友紀
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 ビッグデータの活用としてAI研究が注目を集め、医療や創薬領域においてもディープラーニングをはじめとする機械学習によるデータ駆動型研究が行われている。一方で人体は複雑な構造と機能から成り立つため、毒性機序を理解し、その本質を捉えるには、生体の持つホメオスタシスの維持機構や毒性に関わる多種多様な概念間の関係を適切に知り全体像を把握することが求められる。そのような問題に対し、特定の専門領域から独立し、対象世界に存在する本質的な概念構造を浮き彫りにした形で計算機上に表現するための理論と技術がオントロジー工学である[1, 2]。我々はAMEDの創薬支援推進事業「創薬インフォマティクスシステム構築」において、肝毒性予測インフォマティクスシステムの開発を進めている。本発表では、現在構築中のオントロジー工学に基づいた毒性機序解釈支援型知識システムを紹介するとともに、毒性評価および管理のための応用開発の取り組みについて述べる。特徴量の根拠を与えるためには 「特徴量として出力されたデータに対して、概念的な意味内容をどのように対応させるか」という課題の克服が重要となる。オントロジーによる俯瞰的な視野でデータの再解釈を支援することでデータと高次知識のギャップを解消することできれば、量から質への変換による創薬に向けた新たな技術開発につながると期待される。本研究は、情報化社会の中で大量の情報から対象とする問題をどのように向き合い、内容を同定していくかという基礎的な考察から実用的な応用開発に導くまでの基盤理論として、AIの活用に大きく貢献すると考えている。

1. ‌溝口理一郎:オントロジー工学,オーム社, 2005

2. ‌山縣友紀,五十嵐芳暢,中津則之,山田弘:オントロジー工学に基づく肝毒性作用機序に関する知識の構造化の検討, 第44回日本毒性学会学術年会, P-172, 2017

著者関連情報
© 2018 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top