日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-3
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シンポジウム8
ノトバイオート技術を用いた腸内細菌叢研究
*森田 英利
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抄録

Lederbergは「宿主とその共生微生物はそれぞれの遺伝情報が入り組んだ集合体である“超有機体”として存在していると考えるべき」と提唱しているが、そのタイミングが2003年のヒトゲノム解読完了以前であることは興味深い。その後、Gordonらのグループにより次世代シークエンサーによる細菌ゲノムの16SリボソームRNA遺伝子領域を用いた腸内細菌叢の網羅的な解析により“肥満腸内細菌叢”の考え方が発表された。

また、1945年にReyniersによって無菌動物飼育装置が開発され、無菌動物を飼育できると同時に、ノトバイオート動物の確立が可能となった。その結果、インターロイキン-2ノックアウトマウスにおいて、SPFマウスでは潰瘍や炎症を起こすが無菌マウスでは潰瘍や炎症は起きないことやがん自然発症モデルマウスを、無菌化するとがんを発症しないことが報告された。無菌マウスでは、様々な組織や免疫系の異常や未発達であることがわかってきた。Hondaらの報告によると、ヒト腸内細菌叢による17型ヘルパーT細胞の誘導は、腸内細菌の強い接着は必須であった。また、制御性T(Treg)細胞も無菌マウスではほとんど誘導されず、抗生剤投与したマウスではTreg細胞数が激減することから腸内細菌の関与が考えられ、無菌マウスにヒト腸内細菌叢を投与しTreg細胞誘導能によりスクリーニングした結果、Clostrdium属細菌によってTreg細胞が強く誘導されていることが明らかとなり、これらの菌株群をマウス大腸炎モデルとアレルギー性下痢モデルマウスへの経口投与によりその症状を緩和させている。唾液細菌叢のKlebsiella pneumoniaeが腸管に定着することで1型ヘルパーT細胞を誘導し、そのため慢性炎症性腸疾患の発症する原因となっている可能性が、ノトバイートマウスとSPFマウスの比較に加え抗生物質処理での結果から導かれている。

以上、Gordonらの2006年の報告に端を発しての約12年間に各種疾病や生体影響と腸内細菌叢との関係が次々と明らかにされてきた一連の報告について概要する。

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