背景と目的:一般毒性試験において骨毒性が認められた場合、その開発に与える影響は大きく、より早期に骨毒性をスクリーニングするための簡便な評価系が望まれている。今回、その候補としてゼブラフィッシュに注目し、その有用性を検証する目的で、ラットへの反復投与で骨粗鬆症を誘発するプレドニゾロン及びアリトレチノイン、骨の減少を生じるとされるヘパリンナトリウム及びワルファリンを用い、ゼブラフィッシュ稚魚の骨形成に対する影響を検討した。
材料と方法:Tupfel long-fin(TL)系のゼブラフィッシュ稚魚を、薬剤溶液を入れたウェルプレートに配置し、4~8 days postfertilization(dpf)の期間、複数濃度で曝露した。骨の観察は各薬剤の最大耐量(致死量の約半量又は最高用量の2000μg/mL)で行った。骨基質中のカルシウムに結合するカルセインの2%(w/v)溶液で10分間染色した後、蛍光顕微鏡下で椎骨を観察し、上記薬剤の骨への影響の有無を判定した。
結果と結論:ヘパリンナトリウム群(2000μg/mL)及びワルファリン群(250μM)では異常は認められなかったものの、プレドニゾロン群(100及び300μM)で椎骨のカルセイン染色性の低下が、また、アリトレチノイン群(7.5及び15μM)でカルセイン染色性の低下及び椎骨が不整な形態を示す異常が認められた。以上より、動物に骨粗鬆症等の強い影響を与える薬剤では、ゼブラフィッシュ稚魚でそのポテンシャルを検出できる可能性が示された。一方、比較的作用の弱い薬剤については骨毒性の検出に至らず、今後、曝露条件の最適化等、実験条件の最適化が必要と考えられる。