日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-72
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ポスターセッション
網羅的な既知/予測の化学物質-タンパク質間相互作用情報に基づくin silico副作用予測モデル
*天野 雄斗本田 大士澤田 隆介額田 祐子山根 雅之池田 直弘森田 修山西 芳裕
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抄録

 医薬品の開発コスト高騰や食品成分の薬理作用の報告を受け、in silico予測モデルによる副作用の早期同定はホットトピックスとなっている。既存の予測モデルには副作用誘発物質との構造(分子記述子)の類似性に基づく手法や、Chemical-protein interaction(CPI)に基づく手法があるが、前者はメカニズム面の考察の難しさが、後者は予測対象となるタンパク質の網羅性の低さが課題である。そこで本研究では、潜在的なCPIを網羅的に予測する過程を副作用予測モデルに組み入れることで、メカニズムが考察可能で汎用性の高い予測モデルの構築を目指した。

 まず、3350タンパク質に関する既知CPI情報(約118万件)を用いて、分子記述子から潜在的なCPIを予測するモデルを構築した。次に、この予測モデルを用いて化学物質のCPI情報の欠損値を補完し、SIDERに情報のある心血管系/中枢神経系の41副作用に対してCPIから副作用を予測するモデルを構築した。なお、いずれのモデル構築においても、各説明変数の目的変数への寄与を解析可能なスパース分類器を用いた。その結果、副作用モデルの予測精度を示す5回交差検証におけるAUC(心血管系:0.66、中枢神経系:0.70)は、分子記述子を用いたAUC(心血管系:0.63、中枢神経系:0.66)と比較して同等以上であった。更に、副作用への寄与が示唆されたタンパク質のエンリッチメント解析を実施したところ、心血管系では心伝導系等、中枢神経系では神経活動電位等の予測対象に深く関わるパスウェイ/Gene Ontologyに有意差が認められた。また、心血管系では、心血管系疾患との関係性が議論されている発がん関連(前立腺癌、PI3K-Aktシグナル経路等)にも有意差が認められた。以上より、本予測モデルは、既存手法以上の精度での汎用性の高い副作用予測が可能なだけでなく、メカニズム解明のツールとしても活用できると考えられた。

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© 2019 日本毒性学会
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