主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
短期発がん性試験用の遺伝子改変動物であるCByB6F1-Tg(HRAS)2Jicマウス(rasH2マウス)は日本クレア(Fuji, Shizuoka, Japan)及びTaconic(Germantown, NY, US)の2ヶ所の繁殖施設で生産され、世界中に供給されている。発がん性試験に用いるrasH2マウスは雄のC57BL/6J-Tg rasH2と雌のBALB/cByJを交配し作出したF1が用いられ、亜型化を防ぐために、継代10世代以内もしくは導入5年以内に実験動物中央研究所(実中研:kawasaki, Kanagawa, Japan)から両施設に新たな凍結胚を供給し、新規コロニーを立ち上げ、生産を繰り返している。今回、2016-17年に更新したコロニーで生産された、両施設のrasH2マウスの発がん感受性を比較するため、2018年に実中研に両施設から雌雄各30匹総計120匹のrasH2マウスを導入し、同一のプロトコール及び試験時期で、26週間発がん性試験を実施した。試験群は溶媒群及び標準陽性対照物質であるN-methyl-N-nitrosourea (MNU: 75mg/kg, 単回腹腔内) 投与群とし、いずれも15匹/性/群とした。病理学的検査の結果、溶媒群では自然発生性と思われる前胃の扁平上皮乳頭腫が1例確認された(日本クレア産、雄)のみであったが、MNU群では、rasH2マウスにおける代表的MNU誘発腫瘍である前胃の扁平上皮乳頭腫/癌の発生率が、日本クレア産及びタコニック産の雄で共に100%であった。また、雌での発生率は、それぞれ93.3及び100%であった。既報(所内検討含む)と比較して、2016-17年に日本クレア及びTaconicで更新した生産コロニー由来のrasH2マウスの発がん感受性(他臓器も含めたがんの発生率)が同等であることが確認された。