日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-3
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シンポジウム2
薬物動態からみた毒性の作用機序に基づく安全性評価コンピュータシステムの現状と将来展望
*北島 正人
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抄録

医薬品、一般化学物質、食品素材等における安全性に関しては、主にIn vitroやIn vivoの実験データ、In silicoによる毒性予測結果、各分野の専門研究者の知見や文献等による事例などをあわせて統合的に評価されている。

In silicoシステムによる安全性評価に関しては、最終結果を出力するAIシステムだけでなく、作用機序に基づいた科学的に説明可能なAI技術やコンピュータシステムの活用が有用である。

毒性作用機序の情報としては、Adverse Outcome Pathway(AOP)の考え方に基づいた化合物の生体分子への結合イベントとしてのMolecular Initiating Event(MIE)、毒性作用機序の因果関係をつなぐKey Event(KE)、毒性等の有害事象を示すAdverse Outcome (AO)について、分子、細胞、オルガネラ、臓器レベルのそれぞれの階層を考慮したパスウェイ・オントロジー情報や実験情報が有用である。

さらに、ヒトやラットにおけるIn vivoでの安全性を評価する上では、この毒性作用機序に加え、体内のADME(吸収・分布・代謝・消失)過程や、反応性代謝物の生成・抱合・毒性発現過程などの薬物代謝・動態の作用機序情報を取り入れていく必要がある。さらに、臓器へ分布した化合物の毒性発現は、臓器への暴露量と暴露時間の影響が大きいため、生理学的モデル(PBPK)による各臓器の濃度推移情報を含めた情報を活用し、薬物動態から毒性までの一連の作用機序を考慮することが重要である。

これらの薬物動態から毒性発現に至る作用機序や実験情報を活用した安全性評価のコンピュータシステムやAI技術について、現在取り組んでいる事例も紹介しつつ、現状と将来の展望について紹介する。

本発表の一部の研究開発は、経済産業省「省エネ型電子デバイス材料の評価技術開発事業」(機能性材料の社会実装を支える高速・高効率な安全性評価技術の開発・毒性関連ビッグデータを用いた人工知能による次世代型安全性予測手法の開発)の支援を受けた。

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