日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-3
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シンポジウム22
鳥類における異物代謝遺伝子(シトクロムP450, グルクロン酸抱合酵素)の種差と進化
*川合 佑典
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抄録

鳥類は四肢動物の中で最も種数が多く、様々な生態系での位置を占めている。鳥類の異物代謝能を知ることは、家禽の管理だけでなく、環境汚染物質が野生鳥類に与える影響や希少種の投薬治療など生態系保全の観点からも重要である。しかし鳥類における異物代謝関連遺伝子とその代謝能についての知見は哺乳類と比較して少ない。これまでの研究で、我々は鳥類のシトクロム P450s(CYPs)およびグルクロン酸抱合酵素(UGTs)など異物代謝に関わる遺伝子について配列比較や遺伝子発現量、異物代謝活性の測定を行い、鳥類種間および哺乳類との比較を行ってきた。その結果、主に異物代謝に関わると考えられているCYP1-3ファミリー遺伝子の内、CYP2ファミリー遺伝子が多様化し鳥類独自のサブファミリーが存在する他、鳥類種間での差も大きいことが示唆された。さらに一部の種について、肝臓でのCYP1-3ファミリー遺伝子の発現量を測定したところ、鳥類種によって発現パターンが異なることも示された。また主に哺乳類で異物代謝に関わると考えられているUGT1-2ファミリー遺伝子では、鳥類UGT1ファミリーにおいて遺伝子数の種差が大きいことが明らかとなった一方で、哺乳類では遺伝子数の種差が大きいUGT2ファミリーにおいて鳥類では種差が小さいという系統差が示された。さらに、異物代謝と食性との関係をみるとUGT1ファミリーは遺伝子数が肉食性鳥類で少ない傾向があり、また肝臓ミクロソームのグルクロン酸抱合活性も肉食性鳥類で低い傾向にあることが示された。本発表では鳥類の異物代謝について、異物代謝に関わる遺伝子の種差とその進化、および異物代謝の種差を生み出すと考えられる要因について紹介する。

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