日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: W5-2
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ワークショップ5
腸管オルガノイドの創薬研究への応用
*吉田 晋平
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抄録

 ヒトiPS細胞は創薬研究における医薬品候補化合物の毒性や薬物動態を評価する上で有用なツールとして期待されている.例えば,小腸は医薬品の経口吸収に対して重要な役割を担っていることから,医薬品の吸収性評価においてヒトプライマリー小腸細胞の利用を考えるが,機能的な当該細胞を安定して入手することに課題がある.ヒトiPS細胞から機能的な小腸細胞を作製できれば,この課題を解決できると考えられる.そこで,発生を模した3次元培養法1)により,ヒトiPS細胞から小腸細胞への分化誘導を試みた.

 小腸細胞への分化を検討した結果,ヒトiPS細胞由来小腸細胞 (hiPSC-IECs) を含む腸管オルガノイドが得られたが,その周辺には間質細胞が存在していることが分かった.この状態からhiPSC-IECsのみを回収することは困難であったため,腸管オルガノイドを単分散させた後に磁気細胞分離によりhiPSC-IECsを純化した.次に,hiPSC-IECsの機能を評価した結果,小腸に主に発現しているCYP3A及びCYP2J2代謝酵素活性や代表的なバリア機能のタイトジャンクション形成能を有することを確認し,約8週間の継代培養は可能と考えられた.以上の結果から,hiPSC-IECsは医薬品候補化合物のヒトにおける経口吸収性の評価に利用できると考えられた.

 今回は上記内容に加えて,hiPSC-IECsを用いた当社における他の研究成果,最近報告された腸管オルガノイドを用いた毒性研究に関する論文データを交えて,新しいヒト腸管細胞モデルである腸管オルガノイドの消化管毒性評価への応用について議論したい.

参考文献:

1)Spence. JR., Wells, JM., et al. Nature, 470, 105-109, 2011

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