がん治療における薬物療法は手術、放射線治療と並び主要な位置を占める。薬物療法で用いられる抗がん剤は実験レベルで効能を示し、early phaseで実患者での毒性プロファイル、至適用量、安全性などをチェックする。そういった安全面での担保を行ったうえで既存の標準治療との比較試験で優位性を示すことで一般の患者に届けられる承認薬となる。このように厳正な手続きを経て世に送り出された薬剤が実患者に投与される際、実験レベルでは想定していなかった有害事象や実験系では再現できない長期投与によって出現する新たに患者の悩みとなる副作用を見ることがある。
これらの出来事は創薬にかかわったすべての人が避けたいことであり、これらを対策するためには市販後の調査研究における詳細なデータ採取や、出現してしまう副作用への対策に関する工夫が必要となる。
市販後の調査では血液毒性は正確に採取できるが、疲労、食欲不振、末梢神経障害などの非血液毒性は患者の申告に依存する部分もあり、シンプルな紙面による調査では明らかになっていない。市販後調査においてもePROの利用、ウエアラブルデバイス等での患者生活情報の解析など新しい工夫が必要であり、評価を統一するためにも製薬企業間での非競争的な協力が必要と考える。
また、副作用対策に関しては日本支持療法研究グループ(J-SUPPORT)のようにALL JAPANで挑む組織が2016より発足しており、臨床家で興味を持っている医師は増えてきている。
一方、市販後調査には研究資金が必要であり、こういった取り組みに対して承認後の薬においても企業の支援が必要である。