主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
多くのタンパク質は翻訳後修飾を受けることにより、その機能が調節されている。様々な種類の翻訳後修飾があるが、その中でもヒストンのリジンアセチル化は、エピジェネティックな遺伝子発現を制御する主要な翻訳後修飾の一つである。最近、リジン残基はアセチル化に加えて様々なアシル化修飾を受け、それらアシル化修飾もエピジェネティック制御に関わることが明らかになってきた。これらのリジンアシル化修飾の少なくとも一部は、脂肪酸などの生体内のカルボン酸が生体内化学反応を介してリジン残基のεアミノ基に付加されることによって引き起こる。一方、リジン残基に修飾されるカルボン酸は、生体内に存在する内在性のカルボン酸のみであろうか?我々は、食事とともに様々な化合物に日々暴露されている。その代表的な化合物が食品添加物である。食生活の多様化とともに、食品添加物はますます必要不可欠になってきているが、食品添加物の中には100種類以上のカルボン酸が含まれる。食事とともに日々体内に取り込まれる食品添加物由来のカルボン酸の中に、ヒストンのリジン残基に修飾し、遺伝子発現変化を誘導するものが存在する可能性がある。実際、我々は複数の食品添加物カルボン酸がヒストンのリジン残基に修飾し、少なくともその一部は遺伝子発現変動を惹起することを見出した。本発表では、食品添加物に特化した限定エクスポソーム研究を紹介することにより、食品添加物の隠された機能と生体に対する影響について議論したい。